不動産調査の本質

不動産は、多くの方にとって
人生で最も高額な買い物の一つです。
あるいは投資対象として、
長期にわたり資産形成を支える重要な存在でもあります。
しかしながら、
不動産は
「価格」や「表面利回り」といった
分かりやすい数字だけで
判断できるものではございません。
本当に大切なのは、
その物件が内包しているリスクと可能性を、
どれだけ丁寧に読み取れるかという点にあると考えます。

本稿では、
実務に携わる立場から、
不動産調査において重視すべき視点を、
できる限り分かりやすく整理してご紹介します。

立地は「現在」よりも「将来」を見据えることが大事

  
立地条件は、
不動産価値を左右する最大の要素であることは言うまでもありません。
最寄り駅からの距離、
周辺商業施設の充実度、
学校や病院の有無など、
現在の利便性はもちろん重要です。
しかし、それだけでは十分とは言えません。

たとえば梅田周辺部におきましては、
大規模な再開発が継続的に行われており、
数年単位で街の景観や利便性が大きく変化いたします。
新駅の開業や複合施設の誕生は、
周辺不動産の価値に直接的な影響を与えます。
一方で、地方都市におきましては、
人口減少や産業構造の変化が
需要に直結するため、
将来予測の精度がより重要となります。

調査にあたりましては、
人口動態の推移、
自治体の都市計画、
再開発計画、
さらには競合物件の供給予定などを確認することが望ましいでしょう。
「いま便利かどうか」だけではなく、
「これから選ばれ続ける場所かどうか」を見極める視点が
不可欠です。

法規制は制限ではなく可能性の指標

  
用途地域、
建ぺい率、
容積率、
高さ制限といった法規制は、
しばしば“制約”として受け止められがちです。
しかし実際には、
その土地がどのような可能性を持つのかを示す重要な情報でもございます。

商業地域であれば、
高い収益性を期待できる用途が検討可能であり、
第一種低層住居専用地域であれば、
良好な住環境という希少性を備えている場合がございます。
現況が必ずしも最有効利用とは限りません。
現在の利用状況と、
法的に許容される最大限の活用方法との差を検証することが、
不動産の潜在価値を見出す鍵となります。

不動産鑑定評価基準でも出てきますが、
現在の土地の使用方法が、
決して最有効使用
(良識と通常の使用能力を有する人が、
最大の効用を得ることができる最高最善の使用方法)
ではない場合があります。
専門家が重視するのは、
「いま何が建っているか」よりも
「何が建てられるか」です。
この視点の違いが、
価格の妥当性を判断する際の大きな分岐点となります。

建物は築年数よりも管理状態を重視すべきです。

  
築年数は確かに一つの指標ではございますが、
それのみで建物価値を判断することは
適切ではございません。
特に分譲マンションにおきましては、
管理体制や修繕履歴が価格に大きく影響いたします。

たとえば吹田市のマンション市場では、
同じ築年数であっても、
大規模修繕が計画的に実施され、
修繕積立金が健全に積み立てられている物件は、
高い評価を維持する傾向が見受けられます。
反対に、管理が行き届いていない物件は、
将来的な負担増加への懸念から価格が抑えられることもございます。

修繕履歴、
長期修繕計画、
管理組合の財務状況などを
確認することは、
購入後の安心に直結いたします。
数字では測りきれない「日々の積み重ね」が、
建物の真価を左右するのです。
   

収益物件では“最良の想定”ではなく“最悪の想定”を検証すること

  
投資用不動産においては、
満室想定利回りが魅力的に示されることが一般的です。
しかしながら、
実際の運用では空室の発生、
家賃の下落、
突発的な修繕費など、
さまざまな変動要因が存在いたします。

実質利回りを算出し、
管理費や固定資産税、
将来的な修繕費を控除したうえで、
なお収益性が確保できるかを確認する必要があります。
また、周辺賃料との比較や入居者属性の分析も欠かせません。

堅実な投資判断とは、
「うまくいった場合」ではなく、
「想定より厳しい状況でも耐えられるか」を基準とすることです。
この慎重さが、長期的な安定運用を支えます。

現地調査は時間帯を変えて行うこと

  
物件の印象は、
訪問する時間帯によって大きく異なります。
平日と休日、
昼と夜、
さらには天候の違いによって、
交通量や騒音、
街の雰囲気は変化いたします。
  
昼間は静かな住宅街であっても、
夜間には周辺施設の影響で騒がしくなる場合もございます。
反対に、日中は人通りが少なくとも、
夜間の治安が安定している地域もございます。
こうした点は資料や写真からは読み取ることができません。
  
実際に足を運び、
街の空気を感じ取ることもまた、
重要な調査の一環でございます。

不動産調査とは、
未来を見通す行為でございます。
  

まとめ

  
総じて申し上げますと、
不動産調査の本質は
「リスクを洗い出し、可能性を見極めること」です。
価格は過去と現在の結果を示すものに過ぎません。
真の価値は、これからの時間の中で形成されてまいります。

書類を読み解き、
法規を確認し、
数字を精査し、
現地を歩く。
その一つひとつの積み重ねが、
後悔のない選択へとつながります。
不動産は決して“勘”で判断すべきものではなく、
冷静な分析と丁寧な検証の先にこそ、
納得の答えが見えてまいります。

不動産を検討される皆様にとって、
調査の視点を再確認する一助となりましたなら幸いです。

 

kugata2 (1)
この記事を書いた人
株式会社KN不動産 代表取締役社長
久賀田 康太

寝屋川高校卒
関西大学法学部卒
住友不動産販売株式会社を経て、現職
(保有資格)
宅地建物取引士
マンション管理士
賃貸不動産経営管理士
管理業務主任者(未登録)
 


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