不動産取引の落とし穴――「知らなかった」では済まされない現場のリアル

不動産は、人生で最も高額な買い物だと言われています。
数千万円、場合によっては10億円以上金額が、
一枚の契約書と一本の印鑑で動く世界です。
  
それにもかかわらず、
多くの方にとって不動産取引は
「一生に数回あるかないか」の経験にすぎません。
つまり、ほとんどの方が“初心者”のまま本番を迎えることになります。

この「経験不足」と「高額取引」というアンバランスさこそが、
不動産トラブルを生み出す大きな要因です。
実際の現場では、後悔や紛争の種が想像以上に多く存在しています。
  

なぜトラブルが多いか?

  
まず、不動産には“見えないリスク”があまりにも多いという現実があります。
  
内覧で確認できるのは、
壁紙や日当たり、間取りといった
表面的な部分が中心です。
しかし本当に重要なのは、
壁の裏側や床下、地盤、配管など、
目に見えない箇所です。
雨漏りやシロアリ被害、
給排水管の劣化、
基礎のひび割れ、
さらには土壌汚染や埋設物などの問題は、
住み始めてから初めて発覚するケースも少なくありません。

そして問題が起きるたびに、
「そのような話は聞いていない」
「説明はしていたはずです」といった水掛け論が始まります。
  

救済制度はある?

  
契約不適合責任という救済制度はありますが、
責任期間が短かったり、
免責特約が付されていたりする場合、
買主が自費で修繕費を負担しなければならないこともあります。
契約書の内容を十分に確認せず署名してしまった結果、
数百万円単位の出費が発生することも珍しくありません。
  

回避するまての心構え

  
不動産取引においては、
「物件を見る時間より、
契約書を読む時間のほうが重要です」と言われますが、
これは決して誇張ではないのです。

情報の非対称性?

  
次に見逃せないのが、
情報格差の問題です。

売主、買主、仲介業者の三者のうち、
最も多くの情報を持っているのは仲介業者です。
相場データや過去の取引事例、
物件の弱点、
売主の事情など、
さまざまな情報が集約されています。

しかし、それらすべてが
買主に共有されるとは限りません。

仲介業者は、成約して初めて報酬が発生するビジネスモデルです。
そのため、売却が難しくなるような情報を
積極的に伝えるインセンティブは
構造的に弱いと言えます。
悪意があるわけではなくとも、
情報が偏りやすい仕組みが存在しているのです。

その結果、相場を十分に把握していない買主は
価格交渉もできず、
提示された条件をそのまま受け入れてしまいがちです。
数%の差であっても、
金額にすれば数百万円になります。
知識の差が、そのまま損得の差につながる世界なのです。
  

仲介業者の無自覚なプレッシャー

  
さらに厄介なのが、
契約を急がせる“心理的プレッシャー”です。
  
「他にも申し込みが入っています」
「本日中に決めなければ押さえられません」
  
このような言葉を耳にした経験のある方も
多いのではないでしょうか。
事実である場合もありますが、
人は「失うかもしれない」と感じると、
冷静な判断力を失いやすいものです。

焦って決断した物件ほど、
後悔が残る傾向があります。

ローン条件を十分に比較しなかった、
修繕積立金の将来的な増額を見落とした、
周辺環境の確認が不十分だった――
こうした小さな見落としが、
後々大きな負担になります。
しかし契約後に気づいても、やり直すことはできません。

不動産はスピードよりも納得感が重要な買い物です。
本来、急いで決める理由はほとんどないと言えるでしょう。

物件価格以外の諸経費

  
また、忘れてはならないのが「諸経費」の存在です。

物件価格ばかりに目が向きがちですが、
仲介手数料、
登記費用、
ローン関連費用、
火災保険料、
固定資産税の精算金、
リフォーム費用など、
購入時には物件価格の7〜10%前後の費用が
追加で必要になります。
五千万円の物件であれば、
数百万円単位の負担増となります。

この資金計画を誤ると、
購入後の生活設計が大きく崩れてしまいます。
住まいの取得が家計を圧迫してしまっては、本末転倒です。

売主側のリスクも

  
さらに、リスクを負うのは買主だけではありません。
売主側にも注意点があります。

告知義務違反による損害賠償請求、
境界未確定による近隣トラブル、
残置物処理、
引き渡し後の契約不適合責任など、
売却後に問題が発生するケースもあります。
「古い物件だから現状渡しで問題ない」と安易に考えるのは危険です。
売却にも入念な準備が必要なのです。

物件自体だけではない?周辺環境の問題

  
そして最後に立ちはだかるのが、「環境リスク」です。

建物自体に問題がなくても、
隣人トラブルや騒音、
ごみ出しルール、
自治会の人間関係、
将来の再開発計画など、
住環境に関する問題は契約書にはほとんど記載されません。
法律上の説明義務が限定的だからです。

つまり、この部分はどうしても「運」に左右されます。

だからこそ、昼と夜、平日と休日など、
時間帯を変えて現地を訪れることが大切です。
街の雰囲気や生活環境を自分の目で確かめる地道な行動が、
結果的に最も有効なリスク対策になります。
  

まとめ

  
結局のところ、
不動産取引で最も怖いのは
欠陥物件そのものではありません。

「専門家に任せておけば安心だろう」
「これくらいは普通だろう」
「有名会社だから大丈夫だろう」
このような思い込みこそが、
最大のリスクです。
そこそこの有名仲介会社に勤務してましたからわかりますが、
この業界の「看板」ほど、
あてにならないものはありません。(笑)

慎重すぎるほど調査し、
疑問点は遠慮なく質問し、
契約書を細部まで確認する。
嫌な顔をされるぐらいで良い思いますし、
嫌な顔をされれば担当者の変更を申し出てください。
そして可能であれば第三者の専門家にも相談する。
その“手間”こそが、
将来の安心につながります。

不動産は運で購入するものではありません。
準備量によって結果が左右される買い物です。

人生最大の取引だからこそ、
最後に頼れるのは自分自身の判断力なのではないでしょうか。

 

kugata2 (1)
この記事を書いた人
株式会社KN不動産 代表取締役社長
久賀田 康太

寝屋川高校卒
関西大学法学部卒
住友不動産販売株式会社を経て、現職
(保有資格)
宅地建物取引士
マンション管理士
賃貸不動産経営管理士
管理業務主任者(未登録)
 


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